BAKU名義としてリリースされた最後の作品です。

BAKUの解散に合わせて発売された最後の作品です。
メンバーそれぞれのソロ楽曲が2曲ずつ収録された8cmCDの3枚詰め合わせパックになっております(お値段税込み2500円です)。
6曲で2500円って高くね?って思うんですけど、8cmCDとはいえ3枚もCDが入っているのがその理由でしょうね。
1枚のCDアルバムでは無くて各々1枚ずつのCDシングルで分けて発表している辺りにも、不仲で終わったバンドとしての残り香を感じてしまいます(邪推かな 笑)。
という事で、名義こそ「BAKU」ではありますが、実質的には各々のソロ一発目の音源を集めた作品です。※ビートルズのホワイトアルバムを意識しているそうです。
悲しいかなBAKUとしてリリースした作品の中では、これがダントツで良い出来なんですよね(スタジオミュージシャンの力量が高いからなんだけど)。
これらの曲を3人の作品として発表する未来が有ったら・・・って思ってしまうぐらいに佳曲揃いです。
このクオリティで曲の書き分けが出来ていたら、BAKUは「UNICORN 2.0」的なバンドになっていたかもしれないですね。
GB 1992年10月号
GB(※かつて日本に存在していた音楽雑誌)の1992年10月号で、この作品にまつわるエトセトラが掲載されています。

なんだかんだ人気バンドだったので堂々と表紙を飾っています(ちなみに僕はヤフオクで買いました)。
表紙に映る宗ちゃん(谷口宗一)が「不摂生した井浦新」のように見えなくも無いです。
全8ページの特集で巻頭を飾っていますが、記事の冒頭に書かれている文章の言葉遣いがいささか攻撃的です(山下由美子さんという方の文章です)。
今月の表紙を飾るBAKU。不平を漏らす読者もなかにはいるかもしれないけど、そういう人はまず自分自身の姿勢を見つめなおしてほしいと思います。あなたには夢がありますか?その夢に向かって突っ走れる自信がありますか?あなたと同世代の彼らは、自分たちの夢をかなえるために、やりたいことをやるために、今あるものすべてを自らの手で一度葬り去って、一から始めようとしているのです。あなたにはそんな勇気がありますか?きっとないはずです。8月26日にリリースされる作品集『BAKU』には、車谷浩司・谷口宗一・加藤英幸の、3者3様の夢と野望がいっぱい詰まっています。今作について語る彼らの目はキラキラ輝いていて、20~21歳らしい力強さが感じられました。-これからの日本の音楽界は、ほんとうにおもしろくなりそうです。
太字の部分を読んでいただくとわかると思うのですが、メンバーの擁護に全振りして一部の読者を全否定しています(笑)。
ここまで言いたくなるぐらいに色々な意見を耳にしたんでしょうね。
全曲レビュー
GB 1992年10月号のインタビュー記事を交えつつ全曲レビューして行きます。まずクルちゃん(車谷浩司)の2曲から
BLIND(車谷浩司)
この曲を聴くだけのために、この作品を買う価値があるぐらいの名曲です。
YouTube動画だと音が割れ気味に聴こえるので、この曲の良さがあまり伝わらないのが残念です(アップロードしてくださった方、気を悪くしたらゴメンナサイ)。
この曲は本当にただただカッコいい。28年前の作品と思えないぐらい録音の質も高く、今聴いても瑞々しさが失われておりません。
「60年代、70年代のブリティッシュビートを消化して、いかに新しいものをやっていけるか」がテーマだそうで、この当時のトレンドを押さえた楽曲に仕上がっています。
アーバン・ライフを満喫する全お洒落ピープルのバッグ・ラウンド・ミュージック (単語と単語の間に・を入れたのは村上春樹を意識しているからです) にしてもらいたい一曲です。
クルちゃんのソロ名義になっていますが、作詞作曲はFREAKS OF GO GOで実質的にはSPIRAL LIFEの前身ユニットとしての位置づけになります(石田小吉さんとの共同クレジットです)。
ちなみにギターは石田小吉さん、ベースは石田さんの知り合い、ドラムはクルちゃんの栃木時代の友達だそうです。
今更言うまでも無い話ですけど「FREAKS OF GO GO」は 「 DOUBLE KNOCKOUT CORPORATION 」を意識していますよね。
「 Lennon-McCartney 」のような感じで作詞作曲を共同で行う形を採用しています。
ちなみにクルちゃん本人による、この曲のセルフレビューは
基本的にグルーブ感覚あふれる曲だと思う。それと思想が一歩前に出た曲なんじゃないかな。どうせ今日も正義で金稼ぎだろ?直訳するとそんなサビをのせてるんですけどね。なんだかんだ言ったって、みんなきれいごとや御託ばかり並べて今日も正義で金稼ぎしてさ、調子いいな、と。こんな世界観が底辺に流れてる。俺って基本的に人間不信じゃないけど、信用できる人以外受け付けないとこがあるからね。そのへんをつらつらと書いてみたんだけど。
だそうです。人付き合いが出来ない性格は小沢健二氏と被りますね。脱線しますけど、最近(2020年頃)のクルちゃんは外見がオザケンに寄り始めていますよね。
この曲のキーポイントについては
"目隠し"っていうか隠れてる部分かな。タイトルからしてそうですね。ただ、特別歌詞にこだわるってことはなかった。今までみたいにわかりやすい詩を書こうという気持ちもさらさらなくて、ホント抽象的でいいと思うし、それよりもメロディー、音の組み立て、音圧なり、一個一個の音の要素に感覚はいってたから。
との事です。歌詞の抽象化も恐らくFRIPPER'S GUITERからの影響ですよね。
BLINDの歌詞は下記のリンク先より閲覧可能です。
英文が多い歌詞なのですが、7割がクルちゃん作で、残りは石田小吉さん作だそうです(作曲はこの逆の割合との事)。
ちなみにこの曲の歌詞には洋楽のタイトルがいくつか隠れています。
WHAT YOU WANT→マイ・ブラッディ・バレンタイン
TAKE IT AWAY→ポール・マッカートニー
TAKE IT EASY→イーグルス
LAY IT DOWN→ラット
本当に、このような意図があったのかは不明ですが、もしかしたらSPIRAL LIFEとしての方向性(洋楽オマージュバンドとしての)を示唆していたのかもしれないですね。
歌詞の全般的な内容は「金が欲しいなら、そこに横たわりなよ」みたいな感じで枕営業を匂わす感じのものですね。芸能界の裏を色々見たのでしょうか(笑)
LOVE FLOWER (車谷浩司)
この曲もクソ×10、カッコいいので是非ともCD音源を購入して聴いて欲しいですね(って言っても誰も買わないわなw)
FRIPPER'S GUITARのBIG BAD BINGOを思わすようなサイケデリックナンバー。
一音一音のキレ(特にピアノ)が素晴らしく「何かの終わり」を思わすような物悲しい曲調で「BLIND」に負けず劣らずの名曲です。
以下、クルちゃん本人によるセルフレビュー
メッセージは一曲目の「BLIND」のほうが強いですね。これは特別なメッセージじゃなく、ふとした日のふとした空想、夢うつつに浮かんだ世界をつらつら書いただけ。やってるやってないの問題じゃなくて(笑)、トリップもんですよ。セックス・ドラッグ・ソングのニュアンスが歌詞に表れているから、サージェントペバーズあたりの世界観が出てるんじゃないかな?当時の抜群のメロディー……それでいてポップでサイケでね。グチャグチャと混沌とした言葉では言い表せないような体験、感覚を再表現したかったっていうか。
「君のお花畑に飛び込んで~」の下りは石田小吉さんが作ったデモテープの段階で採用されていたそうです。
歌詞はそのまんま性交の隠喩ですよね。この曲を作った当時はまだSPIRAL LIFEとしての活動は正式には始まっていないのですけど、「石田君はストリートミュージシャンだから、一緒に道端からやり始めてもいいんだ。不安もないし、怖い物なんて今の俺はないな」という車谷節で今後の活動を示唆しています。
とりあえずBAKUの三人の中では最も方向性を変えたのはクルちゃんですよね。ここからSPIRAL LIFEの始動に向けて動き出して行きます。
NOT EVEN THE MOON LIGHT(谷口宗一)
本人も「BAKUの延長上の勢いのある曲」と言ってる通り、「BAKU 2.0」って感じの曲です。
クルちゃんのギターソロが聴けない代わりに、凄腕のドラマーによるマシンガンのようなリズムが堪能できます。
ここまで凄いドラマーを読んできてしまうと加藤さんの腕が悪いのが余計にばれる(笑)
ベースはBAKUのサポートを務めていた太田さんで、この人も抜群に上手いのでリズム隊のクオリティは鉄壁ですね。
宗ちゃんはBAKU時代にも何曲か作曲をしていますけど、この曲がベストオブじゃないですかね。トラックは文句無しの出来と言えます。
「BAKU作品集」は三者三様の作品集になっていますけど、この曲がある事でBAKUらしさを保てているように感じますね。
保つ必要があるのかどうかわかりませんけど(笑)
明日のために(谷口宗一)
自分に向けた卒業ソングだそうです。
曲の出だしでチューニング音に紛れているのは「ぞうきん」と「精一杯の想い」 ですね。
ギターのリフが完全にUNICORN(SUGER BOY)なんですけど、こんなド直球な引用をするなんて大胆としか言いようがないですね笑)
「今後の様子を伺えるような作品にしようと考えて作った」との事でソロシンガーとしての方向性を示す一曲になっています。
BAKU解散後はアルバムを4枚出していますけど、こんな感じの曲調のものがいくつかあります(MY REVOLUTIONとか)。
この曲も「NOT EVEN THE MOON LIGHT」と同じメンバーがバックバンドを務めていますが、太田守さんのベースがとてつもなくカッコいいですね。
BAKUの「DAY AFTER」でも太田さんのカッコいいベースを聴けます。クルちゃんのギターとの絡みはなかなかのもんなので気が向いた方は聴いてみて欲しいです。
この曲は2015年頃に催された谷口+加藤のプチ再結成ライブで演奏されてたみたいですね。
この二人はいまだに交流がある訳だし、解散の理由はそういう事(車谷)だよね。
ちなみに谷口+加藤は作新学院の同級生です。
ツイッターでチラ見したんだけど高校の卒業式は凄い事になったそうで(高校在学中からBAKUとして活動していたので)。
YOU'RE GONNA MISS ME(加藤英幸)
加藤さんのソロ一曲目はBB Kingのカバーなのですけど、加藤ver.がようつべ(死語)にアップされてないですね。
原曲はブルースですが、加藤ver.はロックテイストに仕上がっています。
この当時、加藤さんは「今後の道としてバンドという器は決まってるし~」という発言をしていますが、
解散後にどのような活動をしていたのだろうと思って調べたら「 RED BEANS 」というバンドで活動していたみたいですね。
5年前の写真が出て来ましたけど、雰囲気が変わって誰だかわからなくなってますね。
DQNみたいだったBAKU時代よりも今の方が恰好良くなってるような(笑)
STAND ME UP!(加藤英幸)
こっちの曲はアップされていました。BB KINGの方は権利関係とかで消されたのかしら。
加藤さんの歌声が手島いさむ(UNICORN)+西川幸一(UNICORN)÷2に聴こえるんですけど、わかる人居ますか?(笑)
ドラム以外(ドラムは加藤さん本人です)はスタジオミュージャンの方々が演奏しているそうでギターの上手さが失禁レベルです(笑)(笑)
クルちゃんも上手いギタリストだと思うけど、これはもうレベチですね。
「BAKU作品集」を作るにあたって加藤さんがこんな言葉を残しています。
俺たち3人はこういう音が好きなんだって明確に表せてるしさ。ただある意味じゃ見せしめというか、"ほらこんなにやりたいことが違うんだよ"と言っているようでもあって怖かったりするけど。じゃあ今まではなんだったの?って聴く側が冷めちゃうような気もするし。俺たちの意思としてはそういうところに発表の真意はないから、そこらへんはわかってほしい。3人3様の色が出ていいんじゃない?と受けてめてほしいですよね。
これが悪い事だとは全く思えないのですけど、わざわざ断りを入れる辺り、ファンの趣味に反するような音楽をやろうとしていた状況に葛藤があったんでしょうね。
BAKUも終わってみたら、たった2年のキャリアだったし(メジャーバンドとしては)、その短い期間にスタイルがどんどん変わって行った訳で、色々と軋轢があったんでしょう。
サポートベース兼兄貴分の太田守さんは「DAY AFTERをリリースした辺りの技量でデビューさせたかった」と言ってましたが、そういう意味だったのかもしれません。